カフェのテラス

 パリのカフェ、と言われてまず思い浮かぶイメージといえば、通りに面したテラスでしょう。パリのカフェでは基本的にはどんなに小さなカフェでも、2、3個の椅子が通りに面して出されています。東京よりもよっぽど寒く、太陽の光にありがたみを感じるパリでは、ちょっとでも天気がよくなるとテラス に人が溢れます。現在は公共空間での喫煙が禁止され、カフェの室内でタバコが吸えなくなったため、喫煙者たちはこぞってカフェのテラスに集うようになりました。そのためテラスは以前よりもタバコ臭くなり、冬どきに透明のビニールでテラス全体が覆われている時などは、そこを開けるとむわっとした匂いがするよう。

 

 とはいえ通りに面してテラスが何列も張り出されているカフェの開放感はやはり格別なもの。人間観察をしたり、パリに来た喜びをかみしめたり、次の計画をたててみたり。日本と違って湿気がなく、蚊に悩まされることもないパリのカフェでは、一年中テラスを楽しむことができるのです。

カフェ といえばエスプレッソ

カウンターでエスプレッソ
カウンターでエスプレッソ

 パリのカフェで"Un café s'il vous plaît." (アンカフェ シルヴプレ=コーヒーを1つお願いします)というと、エスプレッソが出てきます。パリのほとんどのカフェには、日本でいう「ホットコーヒー」はありません。一番基本的な「カフェ」はエスプレッソで、店内では約2ユーロ。カウンターで立ち飲みすると大抵1ユーロでエスプレッソが楽しめます。フランスではエスプレッソにたっぷりと砂糖を入れて、甘苦い味を楽しみます。

カフェクレーム
カフェクレーム

エスプレッソはちょっと濃い・・・という方には、café crèmeがオススメです。パリで飲むカフェクレームの美味しいことといったら!カフェクレームはカフェオレのようなものですが、エスプレッソに泡立てたミルクをのせています。カプチーノほどの泡ではないので、イタリアでいうカフェラテのようなものでしょうか。私はこのほどよい泡加減が大好きです。こちらはだいたい4ユーロ近くします。

 

 お金はない、けどカフェのはしごがしたい、でもカフェインが苦手、という私のような方には、カフェイン抜き、「デカフェ」のエスプレッソはいかがでしょう。かなり多くの店にこのデカフェのエスプレッソはあるので、メニューに載っていなくても聞いてみるとあるかもしれません。

カフェのカウンター

 パリのカフェのもう一つの大きな特徴、それはカウンター。もともとパリのカフェはシャンデリアや大きな鏡のあるような、社交場的なカフェから発展していきました。それに対して、19世紀後半から、フランスのオーベルニュ地方という地方の出身者たちが、炭を売り、かつその場でワインなどを一杯飲める小さな店をはじめ、これらが庶民に愛されるようになりました。こうしてカウンター形式の庶民的で手軽なカフェ、ビストロが増えていき、今ではパリのほとんどのカフェにカウンターとテラスがあるようになったのです。今でもカウンター中心のカフェはほとんど椅子席がなく、地元の人が一杯飲みに立ち寄る感じのお店です。こうしたカフェの客層はほとんどが男性客。日本のカフェが女性で満ちているのとは対照的です。

 

 カウンターに来るお客さんはほとんどが馴染みの人たちなので、注文を言わなくてもスッと「いつもの」飲み物が出されます。主人と客達には微妙な境界線があるようで、親しすぎず、突っ込みすぎず、けれどもお客さんの話に耳は貸している、といった感じです。このカウンターの雰囲気をよく表しているのは映画「アメリ」で、かつての宝箱を見つけた男性がカフェのカウンターで涙ぐむシーンかもしれません。

パリのカフェのインテリア

 パリのカフェらしさを形作るものとして、他にはテラスを彩る籐製の椅子があげられます。籐の椅子は頑丈で持ち運びやすく、かつお洒落なため、テラスにはもってこい。店じまいするときには椅子を4つ程上に重ねることもあり、その姿は圧巻です。テラスには籐の椅子とペアになるのが大理石の丸テーブル。ただ椅子もテーブルも最近は味気ない店が増え、籐風にしたプラスチックを編んだ椅子や、ガラス張りの丸テーブルも目立ちます。多くのカフェ通りに面した1階の交差点などの角地にあり、多かれ少なかれテラスに椅子を出しています。パリのカフェのテラスというのは公園のベンチに近い感覚です。疲れたし、あそこに椅子あるから座ろっか・・・、あれなかなか店員さんがこない・・・じゃあ他の店に行こうかと立ち上がることも。わざわざカフェに行くというより、自分が疲れた時にそこに椅子があるからちょっと寄る、そんな気持で使われている、かなり気楽なものなのです。


 典型的なパリのカフェやビストロの店内には、ウィーンから来たトーネットとよばれるタイプの木製の椅子や、壁際には合皮を貼ったソファー席があり、その上には大きな鏡が貼られています。鏡は店内を広くみせる効果があり、鏡やシャンデリアの使用を始めたのはパリで初めて成功したカフェ、プロコープの主人。それまでオリエント風を目指しては失敗したカフェという場をフランス風のスタイルをつくって普及させたのは彼なのです。